バリューチェーン分析とは? 意味やメリット、活用方法

バリューチェーン分析とは
投稿日:2018年7月19日 | 最終更新日:2018年8月18日

これまで3C分析やそれに関連するPEST分析ファイブフォース分析VRIO分析など自社にとって欠かすことのできない重要な分析を解説してきました。

今回は企業の中での価値の流れを分析する「バリューチェーン分析」について解説していきます。

目次

バリューチェーンとは

そもそもバリューチェーンとは原材料の調達から製品、サービスが顧客に届くまでの企業活動を、一連の価値(Value)の連鎖(Chain)として捉える考え方です。

バリュー・チェーンという言葉が示すとおり、購買した原材料等に対して、各プロセスにて価値(バリュー)を付加していくことが企業の主活動であるというコンセプトに基づいたものです。わかりやすく言えば利益が生まれるまでの業務活動の連鎖のことを指します。

売上-主活動や支援活動のコスト=利益(マージン)となる為、下の図のように利益(マージン)は最下流に位置するのが理解できますでしょうか。

バリューチェーン図

アメリカの経営学者であり、ハーバード大学経営大学院(Harvard Business School, HBS)の教授を務めるマイケル・E・ポーターはバリュー・チェーンという概念を生み出す際、組織が日々行っている様々な企業活動を、製品の生産や流通、消費との直接的な関連性の有無によって『主活動』と『支援活動』の2つに分類しました。

主活動とは商品製造やサービス提供など、製品の生産から消費までの一連の流れに直接的な関わりを持つ活動のことを指します。

提唱したポーター氏は製造業における主活動の一例として『購買物流』、『製造』、『出荷物流』、『販売・マーケティング』、『サービス』の5つをあげています。

また、支援活動は主活動とは逆に製品の生産や消費までの一連の流れに直接的な関わりを持たず、主活動の支援を主な目的として行われる活動を指します。

ポーター氏は製造業における支援活動の一例として『全般管理(インフラストラクチャー)』、『人事・労務管理』、『技術開発』、『調達』の4つをあげています。

それぞれのプロセスにおいて、製品に価値(バリュー)を加えていくのがバリューチェーンの考え方です。

バリューチェーン分析の目的

バリューチェーン分析は【どの部分で付加価値が生み出されているか】【競合に対してどの部分に強み・弱みがあるか】を理解・把握し、主活動の構成要素の効率を上げるもしくは競合他社との差別化を図り自社が競合優位に立つことを目的として使用します。

バリューチェーンが競合優位性をもたらす理由

バリューチェーンが競合優位性をもたらす理由は、現時点で自社内で行っている主活動を相互に結びつけることで市場に柔軟に対応する事ができます。そうすることで顧客に価値がもたらされることに繋がります。

つまり自社が「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」のどちらの戦略を選び実行するにしろ、それらに関連するシステムを独立して構築するのではなく、連結して「これらの戦略を達成できるか」を考える必要があります。

 

バリューチェーン分析のメリット

バリューチェーン分析を行うことで、大きく以下の様なメリットがあります。

1.自社の強み・弱みを把握できる

バリューチェーン分析を行うことで、各プロセスにおける付加価値を把握することができます。それにより競合他社と比較しての強み、弱みを理解することができます。

また、同時に競合他社の強み、弱みを把握することで、自社にとってどのプロセスで勝負するかなど具体的なポイントが浮かび上がってきます。

2.競合他社の戦略を予測できる

自社が行っているのと同じように、競合他社も同じように強みを活かた戦略を展開し、弱みをカバーする戦略を練っています。

バリューチェーン分析の対象を【他社】にすることで、今後どのような戦略を展開してくるかが予測できます。

3.リソースの配分を見直し、配分し直すことでコスト削減に繋がる

リソース、つまり経営資源には「資金力」「人的資源」「物的資源」「情報」「技術」「ノウハウ」「ブランド力」など形は違えど様々な資源があります。

今回のバリューチェーン分析で付加価値活動の全貌をあらためて明確にすることで、成功する為のプロセスに優先順位をつけることができるだけでなく、過剰(無駄)に費やしているプロセスを把握することができます。

分析によって得られた情報を企業経営者や各担当者が把握してリソースの配分を見直した結果、コスト削減へと繋がっていきます。

4.利益を最大化できる

利益とは冒頭でも述べたように売上から主活動や支援活動のコストを引いたものです。その為、利益を最大化するには【付加価値の拡大】【コストの削減】という大きく2つのアプローチを図らなければいけません。

これまでのメリットでも解説してきたように、バリューチェーン分析ではどの部分でより付加価値を生み出しているか、どの部分でリソースを過剰に費やしているかを表面化する分析です。

この分析を行うことで前述した2つの点から改善するポイントを見つけることができます。

バリューチェーン分析のやり方(5STEP)

これまででバリューチェーンとは何か、分析を行うことで自社にとって何が得られ、何が改善できるのかが理解できたらいよいよ自社に当てはめて分析してきましょう。

バリューチェーン分析を5つのSTEPを踏み必要性や具体的な施策を学ぶことで、今までの様な「バリューチェーン」というビジネス用語から、あなたの事業の価値を高める強力な武器として役に立つことでしょう。

STEP.1バリューチェーンを図式化する

まずはバリューチェーン分析に必要な全ての活動をリストアップします。バリューチェーンを構成する活動内容な業種によって異なってきます。

リストアップが終わったらそれらを、主活動と支援活動の2つに振り分けていきます。その後、主活動はプロセス順に左から右へ、支援活動においては主活動の上部に重ねていくとバリューチェーンの図式ができます。

参考例として、一般的な製造業では以下のような図式となります。以下を参考に自社事業の活動を当てはめていきます。

また、主活動の各内容を「レイヤー」と呼びます。例:購買物流

バリューチェーン図

STEP.2各レイヤーに関係する部署とコストを把握する

活動をリストアップし図式化ができたら、次は各レイヤーに関係する部署、そこでのコストを把握する為、表にして記載していくとわかりやすくなります。

もし、1つの部署が複数の事業やレイヤーに関わっている場合は、その事業、活動毎に比率を設けるなど一定のルールに基づいたコストの按分処理を行うと良いでしょう。

STEP.3各レイヤーの強みと弱みを把握する

ここまでの作業が終わったら、次はそのレイヤー毎の「強み」と「弱み」を分析していきます。競合の「強み」「弱み」も合せて分析しておくことも大切です。

バリューチェーン分析実施者や一部の担当者だけに話を聞いて作成するのではなく、できる限り多くの担当者や関係者からヒアリングし、情報の正確性を十分に精査した上で資料にまとめていくことをオススメします。

主活動の各レイヤーの評価基準例(製造業編)

「購買物流」において

・サプライヤーや部品メーカーに対する交渉力の有無

・適切なタイミングで適切な量の原材料や資材を確保できるか

・原材料や部品の品質を確保できているか

「製造」において

・受注から納品までにかかる時間の長さ

・国内生産拠点数とその規模

・海外生産拠点数とその規模

・不良品率

・生産の技術力や量産する技術力

・アウトソーシングをしているかどうか

・独自技術や知識を有するかどうか

「出荷物流」において

・製品の品質をそのままに届けているか

・製品の完成から発送までにかかる時間の長さ

・独自の物流インフラがあるかどうか

・アウトソーシングがあるかどうか

「販売・マーケティング」において

・営業担当者が製品の魅力を理解し、価値を認めているかどうか

・実績に繋がる販売チャネルを持っているかどうか

・成約率やリピート率の高さ

・営業のマニュアルや販促ツールの有無とその効果

「サービス」において

・修理料金、保守料金などの価格設定に見直しがないかどうか

・問い合わせフォームなど電話以外の問い合わせ先

・サポートセンターの対応のレベルや混雑状況

・サポートに対する顧客満足度

・問い合わせからサポートが完了するまでの時間の長さ

VRIO分析図

STEP.4 VRIO分析を行う

別記事「自社の強みと競合優位性を見極めるVRIO分析とは?」で解説したように、VRIO分析を用いて経営資源の配分の見直し、戦略の優先順位を把握します。

バリューチェーン分析は組織内に存在する強みの拡大による競争優位性の向上や競合他社との差別化を主な目的としている為、VRIO分析による評価対象も担当者や関係者が強みであると実感しているものを中心に扱っており、分析結果となる競争優位性の評価も競争均衡以上が多くを占めることになります。

より強く大きな組織力を得るためには、競争均衡をどうにか保ち続けている強みを競争優位性のある組織固有の能力(コンピタンス)に変え、持続的に競争優位性を得ることのできる核となる能力(コア・コンピタンス)へと変えていかなければいけませN。

また、通常VRIO分析の際はYES、NOで評価していきますが、2択評価ではわかりにくい為、バリューチェーン分析に用いる場合は「数字による段階評価」の方が適しています。数字による評価のルールは事前に社内で決めておくことも大切です。

VRIO分析表

STEP.5注力すべきレイヤーの見極め、経営資源の最適化を図る

これまでの4つのステップにて「バリューチェーンの図式化」「レイヤー毎のコストと強みの把握」「各レイヤーの数字による評価と優先順位性の明確化」を行うことができました。

これらの情報を元に「注力するべきレイヤーの見極め」「優先順位の設定」「経営資源再配分」を検討していきます。

以下の様なポイントを押さえて行っていくと検討の際に役立ちます。

検討の際のポイント

・1つでも多くのレイヤーをコンピタンス化するか、コア・コンピタンスに対して1点に集中して投資するか

・これから先、「コンピタンス化」や「コア・コンピタンス化」を図ることができる強みは何か

・実際の成果より過剰にコストがかかっているレイヤーはないか

・これまでよりコストを費やすことで、コスト以上に強みを拡大できるレイヤーはないか

・レイヤーの強みを保ちながらもアウトソーシングで生産量の増加やコスト削減が図れないか

・自社独自の技術やノウハウを用いて、差別化できるレイヤーがないか

これらのポイントを押さえ、各レイヤーを検討し、注力すべき点、優先順位の決定、経営資源の配分の見直しを行いましょう。

 

最後に

バリューチェーン分析により、自社の主活動の構成要素の効率を上げることができる、もしくは競合他社との差別化を図り自社が競合優位に立つことができる重要なポイントが見えてくると思います。

更にはバリューチェーン分析にVRIO分析を取り入れ組み合わせてより細かな分析ができることで、「差別化戦略」や「コストリーダーシップ戦略」への展開を検討することができます。

競合に勝つ事ができる糸口の発見、改善することで自社の強みを更に飛躍させるなど、「分析」は戦略的に戦う上で欠かせない重要なことです。

あなたの事業に長い間優位性をもたらす為に・・・。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

店舗経営者の売上・利益アップに直結するためのマーケティングと動線設計が得意。1つの集客アイテムに特化させるのではなく、店舗がすでに利用している販促アイテムの効果を最大化するための戦略からスマートフォン集客、リピートの仕組み化、客単価を上げるための価値戦略、心理学を用いたメニューのプライシング設定、カメラ技術に売れる文章などトータルで改善をサポート。店舗の売上アップが自然とできるためのベルトコンベアを作り上げ、利益が倍々に増える繁盛店が続出。集客改善のサポート業種も豊富である。 【クライアントに成果】を信条に、とにかく結果にフォーカスした実践的な内容のコンサルが得意。