より効果的なマーケティングを展開するために必要不可欠な「ポジショニング」
経営者やマーケティング担当者、マーケティングに興味のある方なら一度は言葉を聞いたことがあると思います。
今回は、自社が同市場内の競合他社より有利に立ち優位性を保ちながら戦うために設定すべきポジショニングについて解説します。
- 競合他社とのシェアの奪い合いの状態に陥っている方
- ポジショニングとは何かイマイチ理解していない方
目次
マーケティングにおけるポジショニングとは?
ポジショニングとは、ターゲットにとって競合他社と比較した際の自社の差別化や訴求ポイントを明確にするための立ち位置を決めることを指します。
環境分析であるSTP分析の1つに位置しており、環境分析後、セグメンテーション(市場の細分化)、」ターゲティング(ターゲットの設定)を経て行うことを前提とします。
自社全体、自社内の各ブランド、事業などそれぞれ比較する範囲を定めます。
ポジショニングは、ターゲットとする顧客のニーズに寄り添うと共に、競合他社との差別化を図り、顧客がイメージしやすい位置取りに自社が立つことで、市場内で優位に事業を展開するための役割を持っています。
セグメンテーション、ターゲティングと組み合わせることで、競合他社と真っ向から勝負するのではなく、自社にとって優位な位置でマーケティング戦略を展開するための重要な基礎戦略と言えます。
ただ立ち位置をイメージするのではなく、自社のポジショニングを明確に把握できるようポジショニングマップを作成して可視化しましょう。
ポジショニングマップの作り方(手順)
ポジショニングマップは以下の手順で作成していきます。
- 軸の候補選出:一般的な顧客のKBFを洗い出す
- 自社が重視するターゲット顧客のKBFを洗い出す
- 競合他社とKBFを比較する
- ポジショニングマップの縦軸と横軸を決めて自社・競合他社を配置する
1.一般的な顧客のKBF(購買決定要因)を洗い出す
まずは製品やサービスに対する一般的な顧客のKBF(購買決定要因)を洗い出します。
KBF(購買決定要因)つまり、製品やサービスを購入する際の判断基準や要素を指します。製品やサービスの機能やデザイン、ブランド、といった製品、サービスそのものだけではありません。
近年の消費者の購買行動からは、製品やサービスに対するイメージやすでに利用した第三者の評判(口コミ・レビュー)も該当します。
あくまでも一般的な顧客のKBFです。どのようなものがあるかを理解していき、書き出しましょう。
この作業ではポジショニングマップの軸の候補となる程度で、まだ決定ではありませんのでご注意を。
2.自社が重視するターゲット顧客のKBF(購買決定要因)を洗い出す
一般的な顧客のKBFを洗い出して把握出来たら、次は自社が定めたターゲット顧客のKPFにはどんなものがあるか洗い出しましょう。
環境分析、STP分析のセグメンテーション、ターゲティングを済ませたことを前提としたのはこのためです。
また、ターゲティング時に利用したであろう顧客分析やSNS分析で把握した情報も取り入れます。
3.自社と競合他社のKBF(購買決定要因)を比較する
続いて自社と競合となる他社とのKBFを比較していきます。
特に自社のビジネスに影響を及ぼす複数の競合他社をピックアップします。
環境分析時にすでに競合他社データを分析していると思いますので、それらを活用しましょう。
ひと目でわかりやすいよう、表にすることをお勧めします。
4.ポジショニングマップの縦軸と横軸を決めて自社・競合他社を配置する
これまでのデータを元に、ポジショニングマップの縦軸、横軸を決め、自社、競合他社を配置していきます。
ポジショニングマップの縦軸、横軸を選ぶ際のポイントとして以下を必ず押さえましょう。
ポジショニングマップ作成時に押さえるべきポイント
- ターゲット顧客にとって重要な価値のあるKBFであること
- 競合他社と自社のポジションに明確な差異があること
- 相関性の高い軸を選ばないこと
- 競合他社が取れない空白のポジショニングを探すこと
ターゲットにとって重要な価値のあるKBF(購買決定要因)であること
いうまでもありませんが、購買決定の決め手とはならない軸を選んでもポジショニングを行う意味がありません。
ターゲットが製品やサービスを購入する際、どこを重視しているのかを明確にしたうえで、ポジショニングマップの軸を選びます。
競合他社と自社のポジションに明確な差異があること
競合他社と自社のポジションに明確な差異があることが大切です。
さほど差異のないポジションで勝負するよりも、明確な差異があるポジションに立って勝負した方が、差別化が図りやすいため、結果選ばれる理由にもなります。
相関性の高い軸を選ばないこと
相関性の高い軸をポジショニングマップに選ぶことによって2軸あるのに1軸しか選んでないような状態に陥ります。
例えば「料金」と「品質」も典型的な例と言えるでしょう。「重さ」と「サイズ」も近いですね。
軸を選ぶ際は相関性のないものもしくはできるだけ低いものを選び、有効的なポジショニングマップを作ることをお勧めします。
競合他社が取れない空白のポジショニングを探すこと
競合他社を配置していくと、ポジショニングマップの空白部分ができる箇所があります。
それが何を意味しているのかはもうお分かりですね?
ポジショニングマップの空白部分に自社が立つことができればつまり、競争優位性の高い独自のポジションとなる可能性が高くなります。
すでに選んだポジショニングマップの軸を固定せず、いくつかの組み合わせて競合優位性を高く保つポジションがないか、じっくり考えましょう。
ポジショニング戦略の成功事例
参考までに過去にポジショニング戦略で競合他社を大きく引き離した成功事例をいくつか紹介します。
レッドブル
「レッドブル 翼を授ける」のCMでも有名なエナジードリンクのレッドブル。
現在となっては世界のエナジードリンク市場において上位に位置していますが、これにはレッドブルのマーケティング戦略が大きく影響を及ぼしています。
エナジードリンク市場が確立される前、栄養ドリンク=疲れを癒すために飲むものというイメージが強くありましたが、レッドブルはこれを「スポーツでパフォーマンスを上げるため」「クラブでテンションを上げるため」「飲むと強くなる」といったイメージ戦略(プロモーション戦略)を展開しました。
また、エナジードリンクを「エキサイティングな体験」「スリルや冒険そのもの」とも定義しています。
CMや広告を見たことがある方はお気付きのように、具体的な機能性についてはほぼ語っていません。
それよりもデザインやキャッチコピー、様々なスポンサードによって、イメージや価値を消費者に伝えています。
実際にこれまでの栄養ドリンクの消費者層がミドル層をメインとしていたのに対し、レッドブルの消費者層はもっと若く、10~20代の層がメインとなっている結果もマーケティング戦略がしっかりと機能している証拠と言えるでしょう。
その他、ポジショニング含むSTP戦略とは別の面ではありますが、レッドブルの生産や流通は他社に任せ、レッドブル自体はマーケティングに集中する戦略をとっていることでも有名ですね。
シーブリーズ
シーブリーズは1902年アメリカ、メイン州の「J.W.ブルックス&カンパニー」にて誕生。
日本では資生堂が販売元となっていますが、このシーブリーズもポジショニング戦略の成功事例としては欠かせません。
特に日本では代表作でもあり、80年代、90年代に青春時代を過ごした40代以上の方にとってはどこか懐かしくも感じるデオ&ウォーター。
80年代当時は利用シーンを海、ターゲットを20代、30代の男性とし、日焼けのケア商品としていました。
その後売上が低迷し、リポジショニング戦略では、学校生活などの日常、ターゲットを10代女性、女子高生、制汗ケア商品としてのポジションに変更しています。
その後、低迷時の売上から8倍もの売上となりました。
すき家
ひと昔前までは日本の牛丼市場のトップとして長年君臨し続けている吉野家。
消費者の中でも「牛丼=吉野家」といったイメージも深く浸透していました。
後発であるすき屋は、競合他社の吉野家含め従来の牛丼市場と同じポジショニング戦略は取らずに市場、ターゲット、ポジションを変更し、現在に至ります。
吉野家含め従来の牛丼市場のSTP戦略
- セグメンテーション:牛丼市場
- ターゲティング:働く男性を中心としてた1人客
- ポジショニング:安く、早く、そして胃袋を満たす
すき屋のSTP戦略
- セグメンテーション:外食市場の中の中食市場
- ターゲティング:ファミリー層、女性客
- ポジショニング:楽しい食卓を家庭の外でも気軽に実現する
牛丼市場という枠に捉われず、近年成長している中食市場に場を移して戦うことを選択し、業績を伸ばしています。
また、ファミレスやファストフードの消費者層の選択肢の1つに入ることで、従来の牛丼市場とは異なる客層からも支持を得ることも成功要因と言えます。
無印良品
飾らないシンプルなデザインが特徴的な無印良品。
ウエアだけでなく、生活家電、生活雑貨、家具、寝具、化粧品など生活に関する様々な商品を取り扱っている日本のブランドです。
”無印良品はブランドではない。個性や流行を商品にせず、商標の人気を価格に反映しない。「これがいい」ではなく「これでいい」という理想的な満足感をお客様に持ってもらうこと”
としています。
また、素材の選択、点検工程、簡素な包装により品質を守り抜くことで、実質本位の商品をより安く提供するとコンセプトを掲げています。
アパレルの市場で見れば、ユニクロやGU、H&M、ZARAなどのファストブランド内でも異なるポジションを確立していますし、近年のチェーン展開しているアパレルの閉店ラッシュともほど遠い状態です。
生活家電や家具などの市場で見ても、ニトリやIKEA、Francfrancとも異なるポジショニングであることがわかります。
製品やサービスが溢れるからこそ重要なポジショニング戦略
考え方や視野が狭ければ、どうしても競合他社と真っ向から勝負する状態となります。
しかし、成功事例からもわかるように、ポジショニング戦略(STP戦略)を見直すことで、業績を大きく変化させることも決して不可能ではありません。
これまで繫盛マーケティングでも携わってきたクライアント様の中には、環境分析や今回のポジショニングを含むSTP戦略を軽視していることで、業績が低迷の原因となっている場合も多く見られました。
決して新たな製品やサービスを開発して現状を打破しなければいけないのではなく、従来の製品やサービスでも戦略次第で大きく変わる可能性は秘めています。
ポジショニングをイマイチ理解していなかった方、競合他社と真っ向から勝負し苦戦を強いられている方は、本記事を機に、見直しすることをお勧めします。