マーケティングに携わっている方であれば必ず耳にしたことがあるペルソナ。
一時はペルソナマーケティングはもう古いといった言葉も流れましたが、果たしてそうでしょうか?
- より多くの人が反応するようなプロモーションを展開したい
- できるだけ多くの人が利用してくれるサービスを作りたい
そう考える方が多いと思いますが、はたして万人受けするようなプロモーションやサービスが現代社会で通用するでしょうか?
人によっては「私にピッタリだ」と思うプロモーションやサービス、商品だったとしても、全く興味がない、関係のない方にとってはピクリとも反応しない。
そういうものです。
【万人受けを狙う】=誰にも響かず、結果売れないといった負の方程式が完成してしまいます。
「たった一人のペルソナを振り向かせる」この一見絞り込み過ぎているような設定が、実際のところ、あなたが思っている以上にユーザーを振り向かせ、企業の利益に変わっていく。
今回はそんなペルソナを用いてマーケティング戦略を成功させた事例を紹介します。
企業規模は異なれど、ペルソナの本質を理解し、検証、改善しながら自社のマーケティングに活かすことで、展開する様々なマーケティング施策に役立てることができます。
本記事を機に、自社に取り入れてみてください。
目次
①BASE(ベイス)のペルソナ
「ネットでお店を開くならベイス」のCMが印象的なBASE。
現在は認知度もかなり高く、2020年5月に100万ショップを突破、2021年5月には150万ショップ、2022年6月には180万ショップを突破するなどECサイトを設立したいユーザーを多く取り込んでいます。
BASEは2012年に設立されましたが、当時でもすでに多くのECプラットフォームが存在している状態でした。
サービスのきっかけはBASE代表取締役社長鶴岡裕太さんのお母さんが「ネットショップをやってみたい」の一言からと言われています。
2012年当時、楽天やYahooショッピングなどのECモール系、カラーミーショップやEストアなどの自社サイト系のプラットフォームなどいくつものサービスが存在していました。
私自身もその当時多くのECサイトの運営や立ち上げに携わっていましたが、しっかり戦略を練って運営している企業は売上が右肩上がりに成長していくとても面白い時代でした。
おそらく、WEB関係の知識がない方では、ECサイトを立ち上げるには多くの時間を費やさなければならないだけでなく、そもそも使いこなせないという印象です。
ネットショップを立ち上げたいが、専門的な知識があるわけではない。
そんな「お母さん」でも使えるようなECプラットフォームのサービスが「BASE」です。
ECサイトを立ち上げる企業、個人店が急増している最中にサービスを設立した当初のBASEのペルソナは「鶴岡さんのお母さん」。
BASEの管理画面を見たことがある方ならよりご理解できると思いますが、BASEは登録からECサイト開設までのスピードも早く、特に特別な知識がなくても十分使える仕様です。
BASEのペルソナを「自分のお母さん」に設定し、「お母さんでもわかりやすい、これはお母さんにはわかりにくい、難しい・・・」などとペルソナが満足して使える機能を開発したことで、設立から10年で180万ショップのユーザーを獲得しています。
これがありきたりなターゲット設定で、ペルソナも設定していなければ現在の地位を獲得してないかもしれませんね。
②SOUP STOCK TOKYO(スープストック東京)のペルソナ
スープストックと聞いて、あなたはどんなイメージをお持ちですか?
私は初めて訪れた時「オシャレで他の飲食店とはちょっと違う女性向けのスープ専門店」と率直に感じました。
いち男性目線では「大半が女性客でやや来店には躊躇してしまう。美味しいが男性にはちょっと量が足りない」といった所でしょうか。
それもそのはず、スープストックのペルソナは「秋野つゆ(37)」と称したバリキャリウーマン。
性格、タイプ、評判、信条、料理、理想などを設定し、実際にいる人かと思わせるような徹底ぶりです。
こうして、この「秋野つゆ」さんが好むような商品開発、通うような店舗開発を行ったと言われています。
そもそもは三菱商事の社内ベンチャーとして始まったスープストックですが、創業10年で42億円を超える売上、2022年現在では62店舗を構えるだけでなくECサイト事業も展開とまさにペルソナマーケティングの代表的な事例と言えるでしょう。
プロジェクトに関わるメンバーがターゲットとする人物像を明確に想像することができたことで、様々な企画のプランニングでも「つゆさんらしい」「つゆさんっぽくない」と言う言葉が出るほどです。
③カルビーのペルソナ
カルビーと言えば代表的なポテトチップスをはじめ、じゃがりこやサッポロポテトなど様々な商品があります。
以前のスナック菓子業界ではペルソナどころかターゲットを明確にしない企業が多く、それでもヒット商品が生まれるケースは少なくありません。
実際、カルビーでも以前は他社と同じようにターゲットを明確にせず、「みんなが好きなお菓子」を開発していましたが、ある一定層には苦戦を強いられていたようです。
それは「20代~30代独身女性」。一時はどのお菓子メーカーのスナック菓子も同じような状況に立たされていましたが、そこは王者カルビー。
みんなが好きなお菓子をなかなか受け入れてくれないこのターゲット層に絞ってペルソナを設定し、新たな商品開発に励みます。
そこで生まれた「Jagabee(ジャガビー)」はペルソナを用いたマーケティングの成功事例としても有名な話です。
ジャガビーのペルソナは文京区在住の27歳、ヨガとスポーツに凝っている独身女性としています。
ただでさえスナック菓子を受け入れにくい、この難しい層にチャレンジし、設定したペルソナに応じてパッケージデザイン(カラーやフォント含む)、テレビCMにはファッション誌「Oggi」で活躍するモデルを起用するなど、スナック菓子業界が苦戦する女性層にアプローチします。
その結果、ジャガビーは一時生産が追いつかず、発売を一時停止するという大ヒット商品となりました。
これを機に現在のカルビーは、各商品ブランドにおいても明確化に注力しています。
コンビニやスーパーなどでカルビー社の商品を見渡すとわかりやすいので、あらためて見てみてください。
④リンパケアサロンのペルソナ
これまでは大企業の事例を紹介しましたが、ペルソナの設定=大企業がするものと捉えられても困るので、今回は弊社クライアント様の事例を1つ紹介しましょう。
※クライアントの利益保護のため、限定された情報のみの提供ですが、中小企業の方の参考になれば幸いです。
近隣の競合と見込み客を取り合っている状況だったため、再度戦略の練り直しを行いました。
このクライアント様は、「競合」「顧客」「自社」分析をあらためて行った後、自社の市場を把握してセグメントしてどのターゲットを狙うかを決めるなど基本に忠実にペルソナを設定。
分析、STP戦略(基礎戦略)の設定後のペルソナは以下となります。
松本 楓さん 46歳
〇〇市〇〇在住 会社員 営業職
経済学部卒
家族構成 夫、子供2人(ともにすでに成人)
育児を終え、再度働き始めて数年。パートタイムからフルタイムへ移行。
休日は夫や友人、職場の同僚とランチに行くのが楽しみ。
自らInstagramのアカウントを持っており、定期的にプライベートの一部を公開している。
ファッションやフードのトレンドはInstagramで情報収集。
自己承認欲求はやや高め、見た目はクールだが実は負けず嫌い。
以前より年齢を重ねたせいか体力の衰えだけでなく、体の疲れが取れず、自身のケアが必要だと感じている。
自分の身体を意識して来た頃から、人の体の仕組みについて興味を持っている。
InstagramやYouTubeで見つけたセルフケアを取り入れているものの、ちょっと物足りなさを感じ始めている。
・・・・まだまだ続きますがここまで。
なぜクライアント様は40歳半ばのフルタイム会社員、ファッションやフードに興味を持つ松本楓さんをペルソナとしたのか?
もちろん内部、外部分析の結果に基づき、より自社のサービスを利用している顧客の共通点を炙り出した故の設定です。
その後、ランディングページを作成してInstagram広告の出稿、チラシのポスティングとオンライン、オフラインともに利用しています。
言うまでもありませんが継続して展開している広告は複数回テストを繰り返し、最適化したものであり、成果を出しているものだけを残しています。
実はこのサロンは当時一人で営んでいた個人サロンです。
現在ではスタート時のやや古めのアパートの一室から、キャパを広くして綺麗なビルの3階で2人のセラピストとともに売上を伸ばし続けています。
ペルソナに絞り込むことで生まれる得られるマーケティングの精度
曖昧なターゲッティングやセグメント、ポジショニングはせっかくのマーケティング戦略もあなたが思う以上に非効率な結果に結びついてしまいます。
マーケティングがうまくいかない、集客できない、売上が上がらないとお悩みの方の多くは、根本的な下準備をしないままプロモーションやコンテンツマーケティングのみ行う傾向にあります。
手間、時間ともにかかりますが、今後良い成果を得たいのであれば必ず最優先して行うべき事項です。
今お悩みのあなた、根本的な原因はここにあるのかもしれませんよ。