マーケティングに携わっている方、興味のある方なら耳にしたことがある「リスクリバーサル」。
FX業界でもリスクリバーサルという言葉がありますが、今回はマーケティングにおけるリスクリバーサルの話です。(ちなみにFXにおけるリスクリバーサルとはコールとプットを同時に反対売買したときに生じる価値の差を指し、マーケティングのリスクリバーサルとは全く意味が異なります)
リスクリバーサルとはわかりやすくいうと何なのか、その定義とは、リスクリバーサルを用いた例などを交えて解説していきます。
高額な商品やサービスを取り扱っていて購入率をもっと上げたい方の解消方法として
競合他社との差別化やUSPをうまく作ることができず困っている方の打開策として
参考にして頂ければ幸いです。
目次
リスクリバーサルとは?意味と定義
リスクリバーサルとは、直訳するとリスク=(お客様が感じる)「不安」を、リバーサル=「反転」させるという意味を持っています。
マーケティングにおけるリスクリバーサルとは、見込み客や顧客が商品やサービスを購入しようとする時に期待する成果を保証し、同時に金銭的、精神的リスクを取り除くことと定義します。
人間の心理として、「少しでも得したい心理」よりも「損をしたくない心理」の方が強く働くため、抱くリスクを取り除くことでスムーズに購買へと繋げるための戦略です。
リスクリバーサルの例
リスクリバーサルとはどういうものかを理解したうえで、実際にある例をみてみましょう。
返金保証(サービスに不満があれば返金対応)
例えば、あなたの何度も見たことがある「全額返金保証」もこのリスクリバーサルの一例です。
「高額だから自分に合わなかったらどうしよう」と感じる方に対し、ある一定期間を設け、期間内であれば万が一気に入らなかった場合、条件を満たした場合に全額を返金すると約束して購入時の金銭的リスクを取り除いています。
このリスクリバーサルは表面上金銭的リスクを取り除くように見えますが、それと同時に精神的リスクを取り除く役目も果たしています。
業界内でも比較的高額な商品である場合によく取り入れられています。
返品保証(商品に不満がある場合返品・交換対応)
こちらもよく目にするリスクリバーサルですね。
購入した商品に対して万が一商品に不満がある場合、期限や一定の条件を満たすことで返品や交換対応するというものです。
修理保証(購入したものが故障した場合に対応)
冷蔵庫やエアコンなど家電を中心によく取り入れられているリスクリバーサルの一例です。
気に入って購入を決断するものの、その先の未来、故障した場合どうしようといった不安を取り除くためのものです。
保証対応期間を長くする、無期限にする、出張修理するなど保証内容も様々考えることができます。
修正保証(技術的リスクに対しての保証対応)
美容室やネイルサロン、たまに似顔絵サービスでも見かける技術的リスクに対して保証対応するリスクリバーサル例です。
新しいサロンで髪を切る、カラーをする、ネイルをする、似顔絵を書いてもらうなど、万が一気に入らなかった、似ていなかった場合のリスクを保証で取り除くといったものです。
回数や期間を設けて無料で修正するなどがあります。
成果保証(期待する成果に満たない場合に対応)
見込み客や顧客が商品やサービスを購入する際、購入することでの成果を期待している状態です。
この成果に満たない場合に保証対応するというリスクリバーサルです。
例えば、ダイエットやボディメイク関係のジム、英会話や塾などにもよく使われていますね。
主にプログラムで提供している場合に取り入れやすい保証です。
返金対応する場合もあれば、無料でプログラムを追加するなど様々なアイディアを組み込むことができるため、サービス内容に応じてアレンジできます。
その他の保証
これまでに挙げたようなリスクリバーサルだけでなく、保証するタイミングやアイディア時代で様々な保証内容を考えられます。
- 初回のご利用を無料にしてまずは自社のサービスの良さを体験してもらうようなリスクリバーサル
- サブスクリプション型の料金形態のサービスにおける初月無料(30日間無料)で翌月から料金が発生するリスクリバーサル
- 成果が出た時に料金が発生するリスクリバーサル(成果報酬)
など。
リスクリバーサルのメリット
現在では様々なリスクリバーサルが存在しますが、実際のところ導入するにあたり、あなたにはどんなメリットがあるのでしょうか。
導入前よりも購入率は劇的に上がる
これまであなたのサービスを気になってはいるものの、購入手前で踏み止まっていた見込み客や顧客のハードルが下がる、リスクが下がるため、導入前よりも購入率が上がります。
また、リスクリバーサルを提供することで、サービスへの自身が伝わり、これまで以上にサービスに対する評価や価値(顧客満足度)が上がることにも繋がります。
すでに購入した客、購入しなかった客に対して可能な限りアンケートやヒアリングを実施して、それぞれの理由を知ることができれば、更に購入率は上がることでしょう。
返金や返品率は下がる
これまでの記事内容を読んで、中には返金や返品が増え、かえって売上が下がってしまうのではと不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
サービスにもよりますが、リスクリバーサル導入による返金、返品率は平均で2~5%未満と言われています。
サービスそのものに正当性が見られないもの、サービス自体が著しく他社より劣るものは除きます。
平均以上の返金、返品が発生する場合は、自社のサービスそのものを見直さなければならないということです。
自社のサービスに対するモチベーションの向上
どんなに素晴らしいサービスであっても僅かな返品や返金などの保証を展開しなければ行かない場合はあります。
自信のあるサービスであればあるほど、悲しいものではありますが、サービスに関わる従業員は少しでも返品、返金率を下げようと努力するため、マーケティングからセールスに至るまでモチベーション向上が見込めます。
悔しい気持ちがあるからこそ、自社全体の仕事に対する意識は向上し、更に良いサービスを開発する。企業にとってはとても良い傾向です。
リスクリバーサル導入の注意点
リスクリバーサルを導入するにあたり、事前に知っておいて欲しい点がいくつかあります。
充分理解したうえでの導入の検討をおすすめします。
中には低質は見込み客や顧客に遭遇する
世の中には色々な方がいるもので「どうせ返金してもらえるからいいや」というような、最初から返金してもらう前提でサービスを購入する方に遭遇する可能性があるということです。
また、そういった方は他社でも同じことをする(していた)可能性もあり、自社にとっては少々面倒です。
しかしながら、自社のビジネスにそぐわない方は、このタイミングでフィルターをかけ、より自社サービスをご贔屓頂ける方のみが残るということでもあります。
保証適用の条件を誰にでも明確にする
あなたが用意した保証適用の条件に関しても注意すべき点があります。
- 明らかに返金・返品させないような条件
例えば「未使用や未開封のみ」といった条件が該当します。もし、通常の販売で誤って購入した場合はこの条件でも構いませんが、リスクリバーサルとしての条件としては、どうでしょう。
開封して使ってみなければあなたのサービスの良さを実感することができない場合もあります。
このような通常販売時につけるような返品条件とリスクリバーサルを同じ条件にすることで、リスクリバーサルの役割を果たさない可能性が非常に高くなります。
少しでも返品や返金を受けたくないという気持ちはわかりますが、無理な条件をつけるのは、結局返品や返金を受け付けないと言っているのと何ら変わりません。
それだけでなく、サービス自体や自社へのイメージを下げる原因に繋がり、これまで積み上げてきたブランディングの効果にも悪影響を及ぼします。
裏を返せば、返品、返金保証適用の条件の「理由は問わない」とすれば、最も効果的であるとも言えます。(可能であれば・・・)
また、何かと細かい条件が多数ある、適用されるのかわかりにくいといった複雑な条件や理解しにくい条件も良い条件とは言えませんね。
誰にでもわかりやすく、安心できるような適用条件を提示できないのであれば、リスクリバーサルの導入は見送るべきだと思います。
リスクリバーサルの本質を理解することで得られる高い購入率
リスクリバーサルの本質は「お客様への信頼の表明」、「自社サービスへの自信の表示」です。
見込み客や顧客の購入時の不安要素を打消し「万が一気に入らなければ〇〇します」と堂々と言えるからこそ、高い購入率へと繋がるものです。
また、すでに世界中の様々なビジネスジャンルでも取り入れられていますので、すでに見込み客、顧客にとっても「慣れ」が生じている場合もあります。
いかに他社やこれまでとは違う、そしてユニークな「リスクリバーサル」を提供することができれば、大きな差別化を図ることができますよ。
以上のことを踏まえ、自社のマーケティングに「リスクリバーサル」の導入を検討してみましょう。